酒田のシンボル

山居倉庫(さんきょそうこ)

 

明治26年に酒田米穀取引所の倉庫として建てられた黒塀の蔵12棟。新井田川と最上川が交わる中州にあり、船着場の跡と復元された小鵜飼船(こうがいぶね)が、舟運の盛んだった当時をうかがわせます。

西陽や季節風から倉庫を守るケヤキ並木、倉庫内の湿気を防ぐ屋根の造り、船着場から効率のいい動線。庄内じゅうの米が集まったこの場所だから、今でも「なるほど」と思う技術の粋、知恵と工夫が見て取れます。なんといっても無駄のない美しさにホレボレ。

この蔵はなんと、115年経った今でも現役のJA全農庄内米貯蔵庫です。朝一番で訪れてみると、大型トラックの荷台と倉庫内をつなぐベルトコンベアに米袋が流れるのを、観光客が不思議そうに眺めていました。

道路側の2棟は来訪者向け物産店やギャラリーです。「むきそば」や「弁慶めし用みそ」などを買い込む私の横で、観光客のおじいちゃんが「山居倉庫っていうのはどこ?」。「ここ全部のことですよ」と店員さんに言われてビックリしていました。

歴史遺産のイメージを裏切り、朝から活気づいている姿に肩透かしを食らったんじゃないかな。長き時代を生き抜く蔵のあり様、当然のように使い続ける酒田の人々が素敵だと、私は思うのですが。